【矢野経済研究所プレスリリース】医薬品流通市場の将来を予測(2020年)~医薬品卸に押し寄せる新たな波を分析し、主要医薬品卸各社の取り組みと今後の展開を予測~

株式会社矢野経済研究所

株式会社矢野経済研究所

2020年09月28日 13:00

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、医薬品流通市場の調査を実施し、医薬品卸各社の動向および将来展望を明らかにいたしました。

1.調査結果概要

新型コロナウイルス感染症の拡大は、医療機関や調剤薬局に多大な影響を及ぼすことになった。3月、4月、5月と月を追うごとに医療機関や薬局の患者が減少し、待合室が閑散とするようになった。特に診療所では小児科や耳鼻科の患者が大幅に減少した。このことで医療機関や調剤薬局は、これまでにない厳しい経営状態に直面することになった。

調剤薬局も保険調剤のみで小児科や耳鼻科のマンツーマン薬局などは、診療所と同様、収益が月を追うごとに悪化した。2020年6月に定例会見を行った日本薬剤師会は、その場で208薬局に実施した調査速報を公表した。それによると5月分の受付回数は対前年同月比24.3%減、調剤報酬は同11.6%減の大幅な減少となった。さらに調剤料は、14日以下が同43.0%減、逆に31日以上が同4.1%増となり、新型コロナウイルス感染症拡大で医療機関への受診回数を抑制したことが数字にも鮮明に表れた。

一方、診療所や調剤薬局以上に新型コロナウイルス感染症拡大の影響が深刻なのが病院である。特に新型コロナウイルスの患者を受け入れている病院は、そのことが経営を圧迫することになっている。具体的には、(1)新型コロナウイルスの患者の病床を確保する必要があり、一般の入院患者と外来患者を抑制することになった、(2)緊急手術以外の手術を抑制することになり、病床利用率が80%を下回ることとなった、(3)健康診断事業も休止に追い込まれた、(4)新型コロナウイルス対策のための費用が急増したものの、回収の目途が立たない、などが挙げられる。





2.注目トピック~新型コロナウイルスでDrug Repositioningが活発化

これまでわが国の製薬企業はDrug Repositioning(DR)に関しては、欧米の大手製薬企業と比べると大きく後れを取ってきた。2017年10月からアステラス製薬、第一三共、田辺三菱製薬が、オープンイノベーションの一環として化合物の新たな適応症を探索するDRで、化合物ライブラリーを用いた新薬探索プログラム『JOINUS(R)』(joint open innovation of drug repositioning)を共同で実施しているものの、あまり目立つような存在ではなかった。他の製薬企業や大学の研究者などもDRの研究開発を行ってきたが、その規模は大きなものではなかった。研究者の中には、わが国の製薬企業も積極的にDRに取り組むべきだとする人がおり、いくつかの医薬品が候補として臨床試験が行われているものの、状況は大きく変化することがなかった。

しかし、新型コロナウイルス感染症が拡大し、欧米ではパンデミックとなった国も急増し、短期間で治療薬やワクチンの開発の必要性が生じることになった。そのため世界中の製薬企業や大学・研究機関が開発時間の短縮のためにDRに積極的に取り組むようになった。有望な治療薬の候補は100近くに上ったものの、これまで実際に認可されたのは米国のギリアド・サイエンシズがエボラ出血熱の治療薬として開発したレムデシビルと、関節リウマチなどに効果があるステロイド剤のデキサメタゾンの2つしかない。

この2品目に続く治療薬の一刻も早い登場が望まれており、有望な候補には次の医薬品が挙がっている。具体的には、日医工の膵炎治療薬フサン、中外製薬の関節リウマチ治療薬アクテムラ、エーザイの重症敗血症治療剤エリトラン、武田薬品の高度免疫グロブリン製剤TAK-888、小野薬品の慢性膵炎や術後の逆流性食道炎の治療薬フオイパンなどが挙がっている。このうち中外製薬のアクテムラと武田薬品のTAK-888については、年内に承認申請予定としており、エーザイのエリトランも年内に治験結果が判明する見通しである。小野薬品のフオイパンも臨床試験の結果が2020年秋までにまとまる予定としている。

※掲載されている情報は、発表日現在の情報です。その後予告なしに変更されることがございますので、あらかじめご了承ください。
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調査要綱
1.調査期間: 2019年9月~2020年7月
2.調査対象: 製薬企業、医薬品卸、医療機関、調剤薬局、行政当局、学識経験者等
3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談・リモート取材ならびに文献調査を併用
4.発刊日:2020年08月31日

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